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最高裁判所第三小法廷 昭和49年(オ)1188号 判決

上告人

日本国有鉄道

右代表者総裁

高木文雄

右訴訟代理人

鵜澤勝義

外四名

被上告人

池岡実

外三名

右四名訴訟代理人

中島達敬

外四名

主文

原判決を破棄する。

被上告人らの本件控訴をいずれも棄却する。

訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。

理由

上告代理人鵜澤勝義、同鵜澤秀行、同栗田啓二、同高橋紀夫、同江川義治、同岡嶋文治、同伊藤幸二郎、同野谷弘美の上告理由について

第一本件の経過

一本件につき原審が確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

(一)  日本国有鉄道労働組合(以下「国労」という。)は、昭和四四年三月ころ、同年度の賃金引上げの要求及び一六万五〇〇〇人の減員を内容とする合理化案反対の要求を目的とした同年四月一三日以降のいわゆる春闘に臨むにあたり、行動方針について全国各地方本部に指令を出したが、その際、右要求を組合員各自がみずから確認し合つてその意思を統一し、もつて組合の団結力の昂揚をはかり、あわせて上告人当局に右要求をアピールする等のために、ビラ貼付の行動を指令し、これを受けた国労札幌地方本部(以下「札幌地本」という。)の指令に基づいて、同札幌支部において執行委員会で具体化方策を決定し、同月一〇日ころ、さん下の各分会に対して右闘争の実施を指令した。同支部さん下の札幌駅分会においては、同月一〇日すぎころ分会委員会でビラ貼付には粘着テープを用いることとし、また、札幌運転区分会においては、同月初めころ執行委員会を開いて前記札幌地本の指令の実施について協議したところ、同分会において指令のあつたビラ貼り行動を実施することは困難な状況にあつたことから、その実施を同分会青年部に委託することに決定した。同分会青年部においては、そのころ右決定をうけ集会を開いて検討した結果、青年部の組合員が各自昼の休憩時に同運転区検修結所(以下「検修詰所」という。)備付けの組合員が日常使用することを許されているロツカーにセロテープでビラ貼付することとし、白紙のビラ用紙に各自が要求事項を記入してビラを作成し、貼付行動に備えた。そして、札幌駅分会あるいは札幌運転区分会所属の組合員は、札幌駅においては小荷物などの事務室備付けのロツカー合計一九九個に約四〇〇枚のビラを貼り、札幌駅輸送本部においては操車連結詰所(以下「操連詰所」という。)備付けロツカー合計五五個に約一〇〇枚のビラを貼り、札幌運転区においては検修詰所備付けロツカー合計五六個に五六枚のビラを貼つた。

(二)  被上告人らは、次のような行動をした。

(1) 被上告人池岡実は、上告人の職員で、札幌駅構内作業掛の職務に従事し、国労札幌駅分会の組織部長の地位にあつたものであるが、昭和四四年四月一〇日ころから柴田助役より組合掲示板以外の施設へのビラ貼付を禁止されていたにもかかわらず、札幌駅分会の決定に従い、同月一四日午前八時四〇分ころ操連詰所において、他の職員が勤務中であるのに、自己が日常使用しているロツカーの扉の表面に、「一六万五千人の人べらし合理化をはね返そう」及び「七〇年安保にむけ春斗を力つよく斗いぬこう」と白地に青、赤色で各印刷された国労作成のビラ二枚を並べて貼付した。そして、ちようど同被上告人の右行動を現認した右柴田助役をはじめ野村助役、有福宏満、尾崎武各運転掛らが同被上告人に対し「ビラを貼つてはいけない。」と注意し、貼付された二枚のビラをはがすよう促したが、同被上告人はこれを無視して応じなかつたため、右有福、尾崎の両名がやむなく一枚ずつビラをはがしたところ、同被上告人は、「何をするんだ。組合の財産に手をかけるな。」といつて両名の手からビラを取り戻し、柴田らが目前で再三にわたつて制止したのにも構わらず、再度前同様の方法でロツカーにビラを貼付したが、その際、尾崎の肩を押し、あるいはビラをはがそうとした柴田の手を払いのける行為におよんだ。

(2) 被上告人秋葉靖広は、上告人の職員で、札幌駅構内作業掛の職務に従事し、国労札幌支部札幌駅分会執行委員の地位にあつたものであるが、被上告人池岡と同様、札幌駅分会の決定に従い、同月一四日午前八時四〇分ころ前記操連詰所において同所備付けのロツカーの扉の表面に国労作成のビラを貼付しようとし、これを認めた前記の柴田、野村らから「ビラを貼つてはいけない。」と再三ビラ貼りを中止するよう指示されたのにこれを全く無視し、被上告人秋葉はじめ一〇名の国労組合員である上告人の職員が同職場において日常使用することを許されているロツカー合計一〇個の扉の表面に、札幌地本に委託されたと称し、被上告人池岡が貼付したと同内容のビラあるいは「新賃金三万五千円要求をストでたたかいとろう」、「ストで大幅賃上げ獲得首切り合理化粉砕」などと印刷されたビラをロツカー一個に二枚ずつ(ただし、一個について一枚のみのものがある。)を並べて、合計一九枚を紙粘着テープで貼付した。

更に、被上告人秋葉は、同月一六日の午前八時四〇分ころにも、前記場所において前同様の方法で備付けロツカーにビラを貼付し始め、これを発見した柴田、野村らが同被上告人に対し「ビラを貼つてはいけない。はがしなさい。」といつて再三にわたつて制止したのに、「貼つて何故悪いのだ。当然の権利だ。」と返答し、柴田らが貼付されたビラをはがそうとすると、「組合のものにさわるな。」といいながら柴田らの手を払いのける行為におよび、結局、札幌地本に委託されたと称し、国労の組合員である三上潔操連掛ら三名の者が職務上使用を許されているロツカー三個の扉の表面に各二枚ずつ並べて合計六枚のビラを前同様の方法で貼付した。

(3) 被上告人本間幸一、同毛利俊明は、いずれも上告人の職員で、札幌運転区検修掛の職務に従事し、本間は国労札幌支部青年部長、毛利は同支部運転区分会青年部長の地位にあつたものであるが、同被上告人らは、前記青年部の決定に従い、同月一五日午後零時から一時までの間に、検修詰所において、「合理化反対」、「C交粉砕」、「検長会議は当局の会議だ直ちにやめろ」などと手書したビラを他の国労の組合員と共に同所備付けのロツカー五五個の扉の表面にセロテープで貼付し、これを現認した大塚勇次検修助役が同被上告人らに対し「職場内にビラを貼ることは違法であり、許可されていない。直ぐはがすよう指示する。」旨注意したのに、「地本の指示だからはがされない。闘争が終わるまでこのままにしておいてくれ。はがしたら今度は糊で貼るぞ。」と返答して、右大塚の指示に従わなかつた。

更に、被上告人本間は、同日午後零時五五分ころ、右の貼付につづいて、前同所において前同様の方法により、自己が日常使用することを許されているロッカー扉の表面に、「安全、安全と言いながら気の許すひまをあたえない当局だ。この様な事では我々の安全は保障されない。もつと考えてほしい」と前記白紙のビラ用紙に手書したビラ二枚を並べて貼付した。

(三)  なお、検修詰所は、職員の詰所として使用され、南北10.47メートル、東西九七メートルの長方形の部屋で、その北側壁に沿つて高さ一八〇センチメートル、幅八八センチメートル、上下二段四個一組のスチール製ロツカー六〇組(二四〇個)が南に向けて一列に設置され、被上告人本間、同毛利らが前記のビラを貼付したロツカーはそのうちの五六個であり、貼付されたビラは、縦の長さ約四〇センチメートル横の長さ約一三センチメートルの統一された大きさの長方形のもので、その下部に国鉄労組札幌地本と印刷され、その余の白紙となつている個所に前記認定のような文言を手書したものである。また、操連詰所は、同様職員の詰所として使用され、南北5.6メートル、東西二一メートルの長方形の部屋で、その中に前記検修詰所のロツカーと同規格のロツカーが南東隅に東に向けて二組(八個)、北に向けて二組(八個)、北側壁の中央よりやや東寄りに二組(八個)が設置され、被上告人池岡、同秋葉が前記のビラを貼付したロツカーは右のうちの一四個であり、これに貼付されたビラも右検修詰所に貼られたビラと同様の規格(ただし、前記のビラの右国鉄労組札幌地本と印刷された部分に国鉄労働組合と印刷されたものもあつた。)で、右ビラの白紙となつていた部分に、さきに被上告人池岡、同秋葉の具体的行動について述べたところで判示したとおりの文言が白地に赤色又は青色の文字で、あるいは色地に白抜きの文字で印刷されたものであつた。

(四)  また、上告人が内部における物品の調達、運用、管理について定めた物品管理規程及び物品事務基準規程によれば、被上告人らが本件においてビラを貼付した前記ロツカーは、会計整理上の区分では備品、用途上の区分では調度用品であり、物品出納員である札幌駅長あるいは札幌運転区長の責任において保管され、職員に使用を許しているものであり、上告人の物的施設の一部を構成するものである。そして、上告人は、その管理する施設に許可なく文字等を記載し又は掲示することを禁じ、組合に対しても掲示板の設置を認めるが右掲示板以外の場所に組合の文書を掲示することを禁じていた。もつとも、本件ビラの貼付がされた当時、国労が上告人から文書の掲示を許可されていた組合掲示板には、必要な多数の文書が掲示されていたため本件のようなビラを貼付する余地は全くなかつた。また、本件ビラが貼付された操連詰所及び検修詰所は、右ビラ貼付行為がされた当時においては、いずれも、旅客その他の一般公衆の出入りは全くなく、被上告人ら職員が休憩や就労前の準備をする等のために使用する場所であつて、同所を使用する大部分の職員は国労の組合員であり、ただ小人数の管理職等の職員が同所の一部で事務をとり、就労していた。

(五)  上告人の総裁は、昭和四四年八月八日、被上告人らに対し、被上告人らの行為は上告人の就業規則六六条三号(「上司の命令に服従しないとき」)及び一七号(「その他著しく不都合な行いのあつたとき」)に規定する事由にあたるとして、日本国有鉄道法三一条の規定に基づいて被上告人らをいずれも戒告処分に付する旨の意思表示をした。

二原審は、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、これについて上告人の許可を得ていないけれども、正当な組合活動として許容されるべき行為であり、右ビラ貼付行為を禁止しあるいは制止した被上告人らの上司の命令は結局のところ不法又は不当というべきであるから、被上告人らが右命令に従わずビラ貼付その他の言動をしたことをもつて上告人の就業規則六六条三号又は一七号に該当する行為をしたものということはできず、本件各戒告処分はなんらの処分事由もないのにされたことに帰し無効である、と判断した。

三論旨は、要するに、被上告人らの行動を正当な組合活動と判断した原判決は、労働組合法七条又は憲法二八条の解釈を誤つたものであり、理由不備、審理不尽の違法をおかしたものである、というのである。

第二当裁判所の判断

一思うに、企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであつて、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。

ところで、企業に雇用されている労働者は、企業の所有し管理する物的施設の利用をあらかじめ許容されている場合が少なくない。しかしながら、この許容が、特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまるものであることは、事理に照らして当然であり、したがつて、当該労働者に対し右の範囲をこえ又は右と異なる態様においてそれを利用しうる権限を付与するものということはできない。また、労働組合が当然に当該企業の物的施設を利用する権利を保障されていると解すべき理由はなんら存しないから、労働組合又はその組合員であるからといつて、使用者の許諾なしに右物的施設を利用する権限をもつているということはできない。もつとも、当該企業に雇用される労働者のみをもつて組織される労働組合(いわゆる企業内組合)の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であるから、その活動につき右物的施設を利用する必要性の大きいことは否定することができないところであるが、労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは既に述べたところから明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない、というべきである。右のように、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設であつて定立された企業秩序のもとに事業の運営の用に供されているものを使用者の許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されないものというべきであるから、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで叙上のような企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであつて、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。

二そこで、以上の見地に立つて、本件について検討する。

原審が確定した前記の事実によれば、本件ビラの貼付が行われたロツカーは上告人の所有し管理する物的施設の一部を構成するものであり、上告人の職員は、その利用を許されてはいるが、本件のようなビラを貼付することは許されておらず、また、被上告人らの所属する国労も、上告人の施設内にその掲示板を設置することは認められているが、それ以外の場所に組合の文書を掲示することは禁止されている、というのであるから、被上告人らが、たとえ組合活動として行う場合であつても、本件ビラを右ロツカーに貼付する権限を有するものでないことは、明らかである。そして更に、前記の事実によると、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、賃金引上げ等の要求を組合員各自がみずから確認し合つてその意思を統一し、もつて組合の団結力の昂揚をはかり、あわせて上告人当局に右要求をアピールする等のために、国労のいわゆる春闘の一環として行われた組合活動であり、上告人の許可を得ないでされたものであるところ、右ロツカーの設置された部屋の大きさ・構造、ビラの貼付されたロツカーの配置、貼付されたビラの大きさ・色彩・枚数等(これらについては、先に判示したとおりである。)に照らすと、貼付されたビラは当該部屋を使用する職員等の目に直ちに触れる状態にあり、かつ、これらのビラを貼付されている限り視覚を通じ常時職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものとみられるのであつて、このような点を考慮するときは、上告人が所有・管理しその事業の用に供している物的施設の一部を構成している本件ロツカーに本件ビラの貼付を許さないこととしても、それは、鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの上告人の目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保する、という上告人の企業秩序維持の観点からみてやむを得ないところであると考えられ、貼付を許さないことを目してその物的施設についての上告人の権利の濫用であるとすることはできない。本件ビラの貼付が被上告人らの所属する国労の団結力の昂揚等を図るのに必要であるとしてされたものであり、ビラの文言も上告人その他の第三者の名誉を毀損しその他の不穏当にわたるものであるとまではいえず、剥離後に痕跡が残らないように紙粘着テープを使用して貼付され、貼付されたロツカーの所在する部屋は旅客その他の一般の公衆が出入りしない場所であり、被上告人らの本件ビラ貼付により上告人の本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されるものでなかつた等の事情のあることは、先に判示したところからうかがい得ないわけではないが、これらの事情は、いまだもつて上記の判断を左右するものとは解されないところである。したがつて、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、上告人の企業秩序を乱すものとして、正当な組合活動であるとすることはできず、これに対し被上告人らの上司が既述のようにその中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできない。

そして、日本国有鉄道法三一条一項一号は、職員が上告人の定める業務上の規程に違反した場合に懲戒処分をすることができる旨を定め、これを受けて、上告人の就業規則六六条は、懲戒事由として「上司の命令に服従しないとき」(三号)、「その他著しく不都合な行いのあつたとき」(一七号)と定めているところ、前記の事実によれば、被上告人らは上司から再三にわたりビラ貼りの中止等を命じられたにもかかわらずこれを公然と無視してビラ貼りに及んだものであつて、被上告人らの各行動は、それぞれ上告人の就業規則六六条三号及び一七号所定の懲戒事由に該当するものというべきである。

三そうすると、被上告人らの各行動は懲戒事由に該当しないとした原審の判断は、ひつきよう、法令の解釈、適用を誤つたものであり、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

四そこで更に、原審が確定した事実に基づき被上告人らの請求の当否について判断する。

まず、被上告人らは、本件各処分は憲法二八条及び労働組合法七条一号に違反し民法九〇条にいう「公ノ秩序」に反するもので無効である、と主張するが、右は被上告人らの本件ビラ貼付行為が正当な組合活動であることを前提とする主張と解されるところ、右行為が正当な組合活動にあたらないことは前述したとおりであるから、被上告人らの右主張は、その前提を欠き、失当である。

次に、前述のように、被上告人らの各行動は懲戒事由に該当するものであるところ、被上告人らは、本件各処分は懲戒権を濫用したものとして無効であると主張する。しかし、上告人の総裁が職員につき懲戒事由があると認める場合にいかなる処分を選択すべきかについては上告人の総裁の裁量に任されているものと解されるところ、一方において被上告人らの各行動が前記のとおりのものであり、他方において上告人の総裁の選択した被上告人らに対する各処分が懲戒処分として最も軽い戒告処分であることを考えると、右各処分をもつて社会通念に照らし合理性を欠き懲戒権の濫用にあたるものとまでいうことはできない。したがつて、被上告人らの右主張も、採用することができない。

そうすると、上告人の総裁のした本件各戒告処分は無効であるとはいえず、被上告人らの各請求は、いずれも理由がないから、棄却を免れないものであり、これと同旨の第一審判決は相当であつて、被上告人らの控訴は、棄却されるべきものである。

五よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(服部高顯 江里口清雄 高辻正己 横井大三)

上告代理人鵜澤勝義、同鵜澤秀行、同栗田啓二、同高橋紀夫、同江川義治、同岡嶋文治、同伊藤幸二郎、同野谷弘美の上告理由〈省略〉

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